投稿者: DSAM

新着 掲載日:2026年10月28日

記事分類 熊本県の被災地状況報告
災害の名称 令和8年熊本地震

「令和8年熊本地震 DSAM支援者支援活動の記録と成果」
DSAM代表 是元佑太

【発災と初動】
〇令和8年熊本地震の勃発とDSAMの迅速な立ち上げ
・激甚なる被害と過酷を極めた環境
令和8年(2026年)7月28日16時27分、熊本県熊本地方を震源とするマグニチュード7.0、最大震度7の猛烈な地震が発生しました。この地震により、県内各地で家屋倒壊や道路寸断、インフラの甚大な途絶が発生し、政府により激甚災害に指定される未曾有の事態となりました。さらに被災地を襲ったのは、熊本市で観測史上最高となる40.3℃を記録するなど、県内10地点で観測史上最高気温を更新する極端な猛暑でした。最大4万4,000戸以上に及ぶ大規模断水や停電、連続する激しい余震という最悪の複合災害下において、救護および復旧作業は難航を極めました。
・会員の安否確認と組織的初動の決断
発災直後より、日本鍼灸師会および全日本鍼灸マッサージ師会等で構成されるDSAM(災害支援鍼灸マッサージ師合同委員会)は、直ちに被災地域および近隣県の会員の安否確認に着手しました。交通や通信が途絶する混乱の中、翌7月29日午前には熊本県内の会員全員の人的被害が無いことが確認されました。同日13時30分、緊急で第1回DSAM会議が招集されました。会議では、東日本大震災や2016年熊本地震、能登半島地震での経験を踏まえ、組織として速やかに熊本県庁へ調整員(仲嶋・杉若)を派遣し、医療支援チームとしての登録およびDSAM活動拠点の設置を目指すことが決定されました。
〇現地交渉と拠点獲得への道程
現地へ向かった先遣隊は、7月29日夕刻に熊本県庁へ到着しました。当初、混乱する災害対策本部との交渉は難航し、DMAT(災害派遣医療チーム)本部へのアプローチも一時拒まれるなどの厳しい局面に直面しました。しかし、先遣隊は済生会病院に設置されたDMAT拠点等を巡回・交渉を重ね、同日19時50分、熊本県庁防災棟3階のDMAT本部長・岡野医師との直接協議に漕ぎ着けました。過去の能登半島地震等での支援実績と「支援者支援」の重要性を提示した結果、医療チームとしての参画と拠点設置の道が開かれました。7月31日朝のDMAT災害福祉本部ミーティングにてDSAMの参画が正式に共有され、8月2日からの常駐・支援活動開始が決定したのです。

【支援方針の確立】
〇なぜ今、「支援者支援」なのか
災害医療支援において、従来は避難所や救護所における一般被災者へのケアが中心でした。しかし、今般の熊本地震においてDSAMが主軸に据えたのは、自治体職員、DMAT隊員、保健師、警察・自衛隊、インフラ復旧作業員らを対象とした「支援者を支援するという支援モデルでした。
連日の極端な猛暑の中、自治体職員や医療従事者は、不眠不休で膨大な災害対応業務に忙殺されていました。20kgの水ポリタンクを抱えて階段を毎日何往復も昇降し、椅子を並べた床で寝起きするなど、彼ら自身もまた過酷な被災者であり、心身ともに限界を迎えていました。被災地の行政・医療・インフラという「社会の基盤」を支える人々が倒れれば、地域全体の復旧が瓦解する——この危機感のもと、DSAMは「支援者を支え、被災地の復旧基盤を守る」という明確な使命を掲げて立ち上がりました。
〇多職種連携と医療体制への介入
本活動の大きな特徴は、単なるボランティア活動にとどまらず、公的な災害医療救護体制の中に完全に組み込まれた組織活動として展開された点にあります。
DSAM本部は、熊本県庁内のDMAT本部と毎朝夕の合同ミーティングに参加し、被害状況、避難所動向、ライフライン復旧情報、医療ニーズをリアルタイムで共有しました。さらに、J-SPEED(災害時保健医療活動フラッシュシステム)を用いた標準化されたデータ入力を徹底し、受療者の症状や疲労度、DVT(深部静脈血栓症)リスク等を定量的に把握・報告しました。これにより、DMAT統括医師や産業医、保健師からも深く信頼され、医療班の一角として確固たる地位を築きました。
〇関係諸団体・協力企業の結集
この支援活動を支えたのは、業界の枠を超えた協力でした。本支援活動に参加・協力した主な団体および企業は以下の通りです。
・ 地元・ブロック支援: 一般社団法人熊本県鍼灸マッサージ師会(草川会長・黒田副会長)、熊本市鍼灸マッサージ師会、九州各県師会(福岡、鹿児島、大分、佐賀、長崎)
・ 学術・教育機関: 九州看護福祉大学(教員・ボランティア派遣)
・ 協力団体・企業: JLCDAM、セイリン株式会社、一般社団法人東洋医学未来推進協会(OMFES)、株式会社村田製作所
資機材の調達から施術者の派遣調達、現地ロジスティクスに至るまで、総合力が遺憾なく発揮されました。

【県庁拠点の展開】
〇熊本県庁支援ブースの開設と運用の拡大
8月2日19時、熊本県庁防災センター303会議室にて、DSAM支援者支援ブースが正式に開設されました。開設にあたり、県庁内の定例対策本部会議およびDMAT全体ミーティングにおいて、防災推進課等の協力を得て「支援者支援の開始」を公式にアナウンスしました。
当初は夜間帯(19:00〜21:00)を中心にスタートしましたが、連日の過酷な業務による職員・隊員の疲労蓄積に伴い、受療希望者が殺到しました。8月7日からは、熊本県医療政策課との協議のもと、活動時間を13:00〜22:00へと大幅に拡大し、最大5〜6台のベッドをフル稼働させる体制へ強化しました。
〇受療者の症状変化と臨床的アプローチ
14日間にわたる県庁ブースでの臨床では、災害フェーズの推移に伴う明確な主訴の変化が観察されました。
・ 急性期(発災直後〜第1週): 瓦礫撤去や資機材搬入、床寝による急性腰痛(ギックリ腰)、急性肩こり、筋緊張性頭痛が突出。DMAT隊員や自衛隊員、県幹部職員の駆け込み寺となりました。
・ 亜急性期〜慢性期(第2週): 慢性的な睡眠不足、自律神経失調、血圧上昇、全身の重度疲労、眼精疲労(VDT症候群)、エアコン冷え、浮腫(DVTリスク)が増加。
施術においては、単なる慰安的マッサージを排除し、問診・バイタルチェックに基づき、鍼灸の即効的な鎮痛効果や自律神経調整作用を最大限に活用しました。急性腰痛を起こしたDMAT隊員が20分程度の鍼施術で歩行可能となり現場復帰した事例や、不眠に悩む職員が施術中に深い睡眠に入る事例が相次ぎ、「劇的な効果がある」と口コミが庁内・隊内に急速に広がりました。
〇県庁拠点における活動実績
熊本県庁拠点における8月2日から8月16日までの14日間の活動において、派遣された施術者の数はのべ117名、受療者数はのべ396名にのぼりました。ピーク時には1日あたり40名から50名もの支援者がブースを訪れ、過酷な職務を支える貴重な休息・回復の場となりました。
8月16日、DMAT本部の縮小・移行に伴い県庁ブースは惜しまれつつクローズしましたが、活動最終日には読売新聞からの取材を受けるなど、その社会的貢献は高く評価されました。

【最前線現場へ】
県庁での集中ケアと並行し、DSAMは支援の矛先を「より過酷な最前線現場」へと柔軟にシフトさせていきました。
〇八代市保健所での支援活動(8月12日〜8月30日)
震源地に近く、深刻な断水と市庁舎・保健所の被害に見舞われた八代地域では、保健所職員が限界を超えた勤務を続けていました。八代保健所長・服部希世子医師からの正式要請を受け、DSAMは八代保健所5階教養室に新たな拠点を設営しました。
活動体制としては、鹿児島県鍼灸師会・鹿児島県鍼灸マッサージ師会合同チーム(大勝代表、妹尾会長ら)が中心となり、福岡県師会(梶原先生ら)およびDSAM本部(成田・仲嶋ら)が連携して支援にあたりました。現場の職員は断水のため20kgのポリタンクを毎日階段で何往復も運び、被災住宅の解体や避難所対応に追われ、夜は椅子を並べて寝るという悲惨な環境に置かれていました。
8月12日から30日まで集中巡回を実施し、頭痛、肩こり、不眠、精神的ストレスに対する鍼灸ケアを行いました。「表情が劇的に明るくなった」「体が軽くなり職務を続けられる」と職員から絶大な感謝が寄せられ、期間中の活動実績はのべ派遣施術者数26名、のべ受療者数120名を記録しました。
〇熊本市上下水道局での支援活動(8月18日〜8月27日・全4回)
猛暑の中、市内の水道復旧に向けて昼夜を分かたず通水作業に当たっていたのが熊本市上下水道局の職員でした。熊本県鍼灸マッサージ師会(草川会長、黒田副会長、杉若ら)は、熊本市上下水道局地下1階の衛生管理室に特設ブースを開設し、全4回の夜間集中ケア(18:00〜21:00)を展開しました。
現場では、連日の夜中までの極限作業により「過労で意識を失い倒れた」「数日間休みがなく中途覚醒や恐怖感が続く」といった切実な悩みを持つ職員が多数来場しました。予約枠は連日満員となり、施術後は「すっきりした」「明日からの復旧作業を頑張れる」との声が相次ぎました。ここではのべ34名の施術者を派遣し、のべ66名の復旧作業職員へのケアを達成しました。

【実績と成果】
〇活動実績
令和8年8月2日の熊本県庁での活動開始から、8月30日の八代市保健所および熊本市上下水道局における支援完了に至る29日間において、DSAMが展開した全支援活動の統合実績は、総派遣施術者数がのべ177名、総受療者数がのべ582名に達しました。
活動拠点ごとの詳細を辿ると、最も早期かつ大規模に展開された熊本県庁防災センター(303会議室)では、8月2日から8月16日までの14日間にわたり、DMAT隊員、県庁職員、警察、自衛隊員らを対象にのべ117名の施術者を派遣し、のべ396名の受療者をケアしました。
次いで、震源地近くで甚大な被害を受けた八代市保健所では、8月12日から8月30日までの期間中、保健所職員や自治体支援スタッフを対象に巡回支援を実施し、のべ26名の施術者を派遣してのべ120名の受療者をサポートしました。
さらに、酷暑下でライフラインの早期途絶解消に尽力した熊本市上下水道局では、8月18日から8月27日までの間に計4回の夜間集中ケアを実施し、のべ34名の施術者派遣によってのべ66名の復旧作業職員への施術を行いました。これらの数字は、被災地の最前線で社会インフラを支え続けた支援者の心身の健康維持に、DSAMが極めて大きな役割を果たしたことを明確に示しています。
〇無資格類似行為との明確な格差と組織的品質管理
今般の被災地においては、避難所等において無届け・無資格者(整体・無資格マッサージ等)による紛らわしい活動が一部で報道され、現場の混乱や健康被害リスクが懸念される事案が発生しました。これに対しDSAMは、以下の厳格な品質管理基準を徹底的に運用し、公的医療救護体制にふさわしい最高水準の専門性と倫理観を示しました。
1. 完全資格確認と身分証明の厳格化: 国家資格の事前確認を徹底し、現地では専用IDカードおよびDSAM識別ビブスの着用を義務付け。
2. 医療水準の問診とバイタルチェック: 施術前の血圧測定や体調チェックを必須とし、高血圧者や重篤な疾患が疑われる受療者のスクリーニングと安全管理を徹底。
3. 徹底した感染症・衛生管理: ディスポーザブル(使い捨て)鍼の完全使用、手指および施術環境の頻繁な消毒を遂行。
この組織的規律と高い医療品質こそが、行政およびDMATから「DSAMだからこそ現場を任せられる」という絶対的な信頼を獲得した根幹となりました。

【今後の災害支援】
〇「支援者支援」が開いた鍼灸の新たな社会的価値
本活動の最大の成果は、「鍼灸の手技と即効性が、過酷な災害現場において『支援者の稼働能力を維持・回復させる不可欠な医療資源である』ことを証明した」点にあります。受療した職員やDMAT隊員の多くは「初めて鍼灸を受けた」という人々でした。彼らが体験した劇的な疲労回復や症状軽減は、「近くの鍼灸院に通ってみたい」という意識変化を生み、鍼灸の社会的認知度と信用を飛躍的に高める大きなきっかけになったのではないかと思います。。

【おわりに】
「被災地を支える人を、私たちが支える」今後の災害支援のあり方を大きく変える活動になったと思います。29日間、猛暑の被災地に駆けつけ、高度な技術を捧げた延べ177名の施術者の皆様、そして活動を陰で支え続けた熊本県・九州ブロック・全国の会員ならびに関係企業の皆様に、深甚なる敬意と感謝を申し上げます。本活動で得られた知見と絆を平時の組織力へと還元し、DSAMはこれからも国民の健康と災害時の安全安心を守る砦として進化を続けてまいります。

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団体名 DSAM
団体所在地 北海道 旭川市
団体Webサイト https://www.facebook.com/profile.php?id=61555975289345

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